夕希side ♯13


 

暗闇に溶けるのは、互いの吐息と囁き合う甘い声。

 

「濡れてるね。夕希ちゃんのここ、味見してもいい?」

「だ、だめです…っ、恥ずかしいから」

 

アルコールがまだ、体内の奥に残っているのか、身体が火照る。普段よりも理性が効かず、取り乱してしまいそうで、夕希は淳弥の体躯の下で身を捩る。

けれど、夕希の抵抗など本気ではないと易易と見通してか、淳弥は夕希の膝を割って、その中に顔を近づけてくる。

熱い吐息が夕希の茂みを揺らすだけで、また内からどろりと愛蜜が垂れた。敏感過ぎる反応も、淳弥は目の当たりにしてるのだろう。

「あ…っ」

やめて欲しいのか、強い刺激が欲しいのか、自分でもわからなくなって、夕希は手で顔を覆って羞恥をやり過ごそうとする。

「夕希ちゃんはここも可愛いね。触れて欲しくてピクピクしてる」

淳弥の肉厚の舌が、夕希の中に捩じ込まれると、はしたないくらい全身が震えた。

「あ…ダメ…っ」

そう言いながらも、腰は淳弥の舌をもっと奥に導くように、淫らに揺れてしまう。

「いいんだよ、夕希ちゃん。もっと気持ちよくなってよ」

夕希の羞恥心を巧みにほぐしながら、淳弥はなおも夕希の感じるポイントを探るように舌を蠢かす。

「じゅ、んさん…っ」

一糸まとわぬ姿で愛撫をくわえられ、快楽に喘ぐ己の姿はなんて愚かしくて浅ましいんだろうと思う。けれど、これ以上に満ち足りる想いも行為もきっとない。

「好きだよ、夕希ちゃん…」

「私も…っ、や、あぁっ、淳さん、私、い、っちゃ…っ」

途切れ途切れの声を、闇に放ちながら、夕希はおとがいを大きく逸らす。ビリビリっと電流みたいな快感が、夕希の全身を貫いた。

 

 

「気持よかった?」

放心状態で、シーツの上に弛緩した身を投げ出した夕希の背中を、淳弥は優しくなで上げる。

「そんなの聞くのずるいです…っ」

恥ずかしさにシーツを掴んで、顔を埋めた。

「ごめんごめん、夕希ちゃん、可愛かったからつい…ね」

寝よっか、と淳弥は何事もなかったかのように、夕希の肩を抱き寄せる。もう慣れっこになってしまった腕枕。けれど、このまま眠ってしまうのは、夕希は嫌だった。

こんなこと、女の側から恥ずかしくって言えないと、ずっと要求を飲み込んで悶々としていたけれど、やっぱりこのままなのは嫌だ。

 

「…淳さん、私、ちゃんと抱いて欲しいです…」

 

小さく聞こえていた淳弥の呼吸すら、一瞬止まって狭い部屋は静寂に包まれる。

「……夕希、ちゃん」

絞りだすような低い苦しげな声で、淳弥は夕希の名を呼ぶ。

淳弥の腕が折りたたまれて、夕希の身体はもっと淳弥に密着した。与えられる温もりと愛情。どうしてこれだけじゃ、満たされないんだろう。淳弥に大きく壁を作られてるみたいで、不安が消えないのだろう。

 

ひとつになれば、まるで全ての悩みが霧消されるとでも言うように、夕希は彼の温もりに飢えてしまっている。

 

 

「夕希ちゃん、ごめん」

『ごめん』

やっぱりダメなんだ。恋愛、もしくは性的な対象じゃないってこと?

「俺、実は…」

たっぷり間を開けて、淳弥が何かを夕希に伝えようと切り出した時には、夕希はもう自分の発言を後悔しきりで、続きを聞く余裕なんてまるでなかった。

「い、いいんです、淳さん…無理、しないでください。私、淳さんとこうしていられるだけで満足ですから」

夕希の願いは、叶わない。それだけのことだ。その理由なんて知りたくない。

「ち、ちが。無理とかじゃなく…俺…」

「も、いいです」

「……」

泣きながらかぶりを振ると、淳弥はさっきより強く夕希を抱きしめる。

「俺…夕希ちゃん、好きだよ」

だったら、どうして。嬉しいはずの言葉も、逆に夕希を落ち込ませるだけだった。

「悪いのは、全部俺だから。泣かないで」

親指で夕希の涙を掬ってから、淳弥は着てたTシャツを勢い良く脱ぐ。引き締まった淳弥の身体を、夕希が見るのは、そういえばはじめてだった。

「ごめんな」

もう一度謝ってから、淳弥は夕希の身体をもう一度組み敷いた。

「…淳、さん」

淳弥の思考も行動も理解出来ずに戸惑う夕希の手を取って、淳弥は下半身に導く。別の生命体のような熱く固いものが夕希の手のひらにぶつかる。

「おっきい…」

素直な感想を述べると、「やめてよ」と淳弥は照れくさそうに笑う。

丁寧に優しく愛撫してから、しっとりと濡れ、待ちわびていたような夕希の中に、淳弥は己の分身を埋め込む。

セックスがこんなに気持ちよくて、心も身体も満たされるものだなんて、夕希ははじめて知った。

 

 

何度も深く激しく貫かれ、目の前がちかちかと揺れ、意識が飛んで行きそうになる。

「やぁ…っん、淳、さん…、気持ち、いい…っ、も、だめです…っ」

ガクンと夕希の身体が弛緩したのを見届けて、淳弥は夕希の外に精を放つ。

 

 

たった一度きりのセックスで、淳弥は夕希の心と身体に深い悦びと苦しみを植え付けた。

 

 

 


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